女子高生の純情

「あーうざい!!」

友達は朝から機嫌が悪かった。

「どうしたの?」

「彼氏が旅行行くの許してくれないの!ひどいと思わない?

「へーいいじゃんね、旅行くらい。誰と旅行行くの?」

「バイト仲間でスノボすんのv」

ああ、それでか。

バイト仲間といえば当然男の子も女の子もいるわけで。

「6人で行くんだけど、男が3人もいるってことに渋っちゃってさ。

 一応了承はしてくれたんだけど、その後もぐちぐちうるさいのよ!本当しつこい!!

 快く送り出すってできないのかなー。」

「心配なんだよ、彼氏も。」

「心配してくれるのは嬉しいんだけど…。嫉妬深い男もどうかと思う!

 他の子の彼氏は『楽しんでおいで』って大人の対応だったんだよ?!『正直に話してくれてよかった』だって!!

 これだからタメはだめなんだわ。自分のことしか考えてないんだから!!

 本当に隠してる部分言ったら、死んでも離してくれなさそう。

「何。隠し事あるの?」

「うん。貧乏旅行だから、大部屋一つ取って、2泊3日の間6人で雑魚寝なの。」

「わー。それは隠しておいて正解だわ。」

「でしょ?これは皆相手には言わない方がいいよねってことになったの。一応考えてるんだから。

 男がいるってことは正直に言った方が良いけど、嘘をつくべき所もあるって。」

確かに正直に言うことで、誠意は伝わると思う。

ただ全て開けっ広げに言うべきではないってことだ。

「その点野原君はねちねちなんてしなさそうでいいなー。」

 

うーん、しんちゃんね。

確かにさっぱりとした性格。

『ねちねち』とかいう言葉は当てはまらない。

でも、考えてみたら嫉妬なんてされたことないかも。

心配、されたことあったっけ?

 

思い立ったら即実行!

しんちゃんの前で男の子と話してたら、ちょっと嫌な顔してくれるはず。

だってネネがそうだもん。

しんちゃんがネネ以外の女の子と楽しそうに話してたら、少しだけ不安になるもの。

 

昼休み、しんちゃんの教室に遊びに行く。

教室にはいないみたいだから、またどこか行ってるのね。

教室の中のめぼしい男子を捜す。

あ、あの子でいいや。

顔はなかなか。性格良し。ネネにも多少の興味を持ってる。彼女はいない。話してて楽しい。

決ーまり♪

教室の中にいる彼を廊下に呼び出して、二人で話す。

廊下にいれば、教室に帰ってくるしんちゃんにちゃんと見てもらえるもんね。

 

数分すると予鈴が鳴った。

生徒が動き出す。

トイレに行ったり、自分の教室に帰ってきたり。

廊下で話す私たちを見た他の男の子たちも何人か話に加わり始めてきた。

うんうん、良い感じ。

 

あ、来た。

すらっと伸びた背、さらさらの黒髪。

魅力的な笑顔はいつだってあの頃のまま。

 

「お、ネネちゃーん♪何してるの、こんなとこで。」

笑顔で近づいてくるしんちゃん。

数人の男の子と楽しそうに話しているネネ。

「なになに、楽しそーじゃん♪え?スノボー??おーいーなぁ!俺も行きたい!!」

なんて話題を掻っ攫って、誰よりも楽しそうに話し始める。

その行動に嫌味なんて全くなく、純粋に話を楽しんでいる。

何よ、やきもちはどうしたのよ。少しくらい妬きなさいよ。

いつだって思い通りにいかない。

だから飽きないのよね、なんて良い意味での諦めもある。

一般男子とは違う感覚を持ち合わせてるから、だから魅力的なんだこの人は。

 

「え、何?お前も行ったことあるのー?じゃあ今度行こうよ!冬休みに★」

しんちゃんの言うことは絵空事では留まらない。

口約束だって実行してしまう。

だから焦った。

しんちゃんの腕を引っ張った。

「ちょっと!部活もバイトもない日はネネと居る日でしょ?」

ただでさえ短い冬休み。

部活もあって、バイトもしてるしんちゃん。

人恋しい季節には、ネネの傍にいてネネのこと温めてよ。

「え。ネネちゃんは行かないの?スノボ♪」

予想外のことを聞かれて、びっくりした。

はじめからネネも人数に入っていたの?

だって、それってつまり…。

一瞬のうちにいろいろと考えてしまった自分に腹が立つ。

(中学生男子なの、ネネの頭の中は?!誘われたのはスノボよスノボー!!)

顔が赤くなるのがわかって、俯いてしまった。

男の子たちはネネの赤面に、にやにやしながら何かを悟った風だ。

『ははーんv』なんて、すべてお見通しだとでもいう声が聞こえてきそうだ。

 

「ネネちゃんも運動神経良いからきっとすぐできるようになるよ★」

しんちゃんは気付かないまま話し続ける。

すると、

「あ、そういや俺冬休みは母ちゃんの実家に帰るんだった。」

「俺、今金なくてさ。」

「バイトがみっちり入ってて休めねーよ。」

なんだかんだと理由をつけながら一人、また一人と教室に戻っていく。

…ネネに目くばせしながら。

何よ!余計な気、使っちゃって!!

言い返せない自分が悔しい。

「…俺も行かねっ!二人で温泉旅行でも行ってくれば?」

最後に渋々去っていったのは、始めにネネと二人で話していた男の子だった。

もう、なんだか。振り回して、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

「なんだよー皆。でもまあ、温泉かー♪温泉宿で卓球でもいいかも★

 やりにいく?卓球★」

なんて、卓球のポーズをして見せるんだ。

分かってるのかしら、この男子高校生は。

「…行き、たい。しんちゃんと温泉。」

浴衣姿のしんちゃん、見たいなー。

なんて思ってしまった、女子高生の純情

「よし、行こう!」

にかっと笑った目の前の太陽は、どこまで考えているのか。

 

本鈴がなって教室に戻った。

「どうだった、ネネ。野原君やきもちやいてくれた?」

「…温泉、行くことになった。」

「え。会話になってないんですけど…」

 

 

 

 

バイト仲間、男女6人でスノボ旅行に行ったのは私の友達のお話。

よく、それぞれの彼氏・彼女は納得したよなーと思う。

雑魚寝話も本当。

気心の知れた仲だから、恥じらいも何もないんだってw

 

なんか。

書こうと思ってることがあるのに、書き進めていくと話が逸れてしまうのは私の悪い癖です。

これも、『知りたかったの、貴方の気持ち』の番外編として、その話のちょっと前の話を書きたかった。

やきもちを妬かれないで、不安になるネネちゃんの様子を書きたかったのに、何故か温泉話に。あれ?

 

でも高校生だけでお泊まりできるかな?

高3の冬にはできたけど。

あ、でも身分証明の提示とかはないか。

 

ちなみにネネちゃん純情っぽいことになってるけど、高校2年生の彼らは既に「済」だと思いますw

でも「みんなの前で堂々とお泊りの約束をしてしまうしんちゃん」に照れちゃったのではないでしょうか。

 

 

←back