君の鎧を剥ぐのは僕じゃない。

 「ネネちゃん、なんでボーちゃんなの?」

「そーだぞ。ボーちゃん、良いとこ取りだぞ。」

「何よそれ。私の想いが間違ってるとでも言いたいの?」

「「そうじゃないけど…。」」

 

 

ネネちゃんとボーちゃんが付き合ってからまだ1週間。

しんちゃんだって、風間君だって分かってはいるんだ。

ボーちゃんが、ただの大人しいだけの男じゃないってことを。

それでも、どうしても納得できないのは、自分が選ばれなかったから。

 

 

ネネちゃんは僕たちのお姫様。

小さい頃からのそれは、きっとこれからも変わらない。

でも、そのお姫様が選んだのはボーちゃんだった。

 

 

しんちゃんと風間君は「好き」を態度に表せるタイプ。

逆に言えば、隠せないタイプ。

恥ずかしげもなく、皆の前で「好きだよ」なんて言ったりもする。

そんなことは日常茶飯事。

でも、本気で想いを告げたことがあるのかは、誰も知らない。

それが、しんちゃんと風間君の愛情表現。

 

ボーちゃんはと言えば、特に目立ったことはないんだけど、

たまに見せる表情とか、態度から、「好きなんだろうな」って思ってた。

本当にそれくらいだった。

 

 

 

話が終わらないうちにネネちゃんの携帯電話が鳴った。

会話の様子からすると、ボーちゃんからのようだった。

「お店分からないみたいだから、迎えに行ってくるね。」

なんて言って店を出てしまった。

 

 

今日は久しぶりにかすかべ防衛隊の5人で集まる日。

ぼーちゃんの所属する剣道部は、大会前で部活が長引いたため、少し遅れてくるのだった。

そのボーちゃんをネネちゃんが迎えに行くと、残ったのは男3人。

 

 

先程の話の続きが展開された。

「でも僕、なんか分かる気がするよ。」

「なんでだよマサオ君!この裏切り者ー!!」

直情的に怒ってくるのはしんちゃん。

「僕も客観的な意見を聞いてみたいな。」

なんて格好良く言いながらも、『僕を納得させてみろ!』って顔をしているのは風間君。

…だから、こういう所なんだよね。

ボーちゃんとの違いって。

 

 

「ボーちゃんは誰よりも広い心の持主でしょ。

 その寛容さで、ネネちゃんを包んでくれるんだと思う。

 だから姫気質のネネちゃんにはぴったりなんじゃないかな。」

「「納得できない!」」

二人が言ったのは同時だった。

 

「俺だって空のように広い心を持ってるぞー!」

「は。しんのすけにそんな広い心があるとは到底思えないけど?

 それより僕の方が寛容さにプラスして女の子を喜ばせる術を身につけているのに。」

 

「うーん。なんて言うんだろう。

 しんちゃんは自由すぎるよね。それじゃネネちゃんじゃなくても、付き合う女の子は大変だと思うよ。

「ゔーー。

 俺は俺の生きたいように生きてるだけだぞ。。」

 

「風間君は意外と、俺様で短気だもん。

 ネネちゃんと付き合ったら喧嘩が絶えなさそう。」

「…マサオ君て僕のこと嫌いだろう?;」

 

「ボーちゃんは、ネネちゃんのすべてを受け入れながら、口を挟むべきタイミングを知ってるんだよね。」

うん、そうなんだよ。

「だってこの間なんてさ、ネネちゃんがボーちゃんに怒られてるところ見ちゃったんだよ!」

「「うそ!!」」

二人とも信じられなさそう。

僕も目の錯覚かと思っちゃったくらい。

 

 

 

僕とボーちゃんとネネちゃん。

3人で話していた時、ネネちゃんのバイト先の店長の話になった。

ネネちゃんは店長と上手くいってないみたいで、愚痴の嵐。

これでもか!ってくらいのストレス発散だよね。

僕は呆れながら聞いてたけど、ボーちゃんはちゃんと聞いてる風だった。

その中で、『本当嫌。最悪。死ね!』ってネネちゃんが言い放った時だった。

そしたらボーちゃんが、真剣な顔で言うんだ。

『「死ね」って言葉、もう言わないで。僕、そんなの聞きたくないし、ネネちゃんにも使ってほしくない。』

って。

その後のネネちゃんは、しゅんとなっちゃって。

素直に『ごめんなさい。』なんて言うんだ。

ボーちゃんはすぐ元の穏やかな顔に戻って、『分かってくれればいいから』だって。

僕はもちろん吃驚した。

叱るボーちゃんにも、素直なネネちゃんにも、二人のやり取りにも。

 

 

 

「そうなのか…。」

風間君はそう言いながら、しんちゃんは目を丸くして、二人とも驚いていた。

 

 

「なんだよー!俺の愛を惜しみなくあげたのにー!!」

悔しがってるしんちゃんの声は、先ほどよりも少し明るく、多少の諦めはついたようだった。

「まったくだ。こんないい男、他にはなかなかいないぞ。」

ふん!なんて言いながら、風間君も同様だ。

 

 

僕が笑っていると、しんちゃんと目が合った。

「…そおゆーマサオ君はどうなんだよ。」

「僕は姫のペットだから、始めから対象外でーすw」

 

 

 

 

 

 

 

 

しんちゃんは気付いていたのだろうか、このぼくの気持ちに。

おどけて言ってみせたけど、直球なしんちゃんの言葉に結構動揺していた。

 

僕はずるい。

この想いが叶うはずないって決めつけて、諦めた。

諦めきれていないのに、ネネちゃんのことは友達以上に見ていない、という素振りをした。

だって報われない思いなんて、あってもなくてもかわりない。

 

 

風間君は自他共に認める才色兼備だ。

ボーちゃんは誰よりも優しいし。

しんちゃんは、存在自体が唯一無二だ。

そんな粒ぞろいの防衛隊の中にいると、自分がひどくちっぽけな存在に思えてならない。

 

 

「僕は誇れる所なんて何もないから。

 だから誰かに特別に思ってもらえることなんてないんじゃないかな。」

そう言い放った僕の言葉にすぐに答えが返ってきた。

「そんなことないでしょ。マサオ君はネネの一番の友達よ。」

後ろからだった。

振り向くとボーちゃんと、笑顔のネネちゃんが立っていた。

その姿は誰よりも気高く、誰よりも美しい。

「自信持ちなさい!」

 

 

 

 

誤解されやすい性格だけど、この子は強さだけで成り立っているんじゃない。

お姫様なんかじゃない。

強がっていないと、内の弱さが滲み出てしまうから、鎧を纏っているだけ。

気付いた時にはもう遅かった。

 

君の鎧を剥ぐのは僕じゃない。

 

ボーちゃんはきっと初めから知っていたんだ。

ネネちゃんがただの一人の女の子だってこと。

そんな簡単なこと。

 

 

 

 

 

 

 

 長い長い長い!!

どうしてもコンパクトにまとめられない。

話を詰めすぎでしょうか?

省略しようと思っても、「うーん。こことここは繋がってるしなー。」なんて思って結局そのまま。

 

ボーネネなんだけど、マサオ君の語りで、マサオ君の心情が書かれてる。

ボーネネ部屋かマサネネ部屋か迷った挙句、新しい部屋を作ってしまいました。

 

 

 

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