彼氏が遠くに転勤する。
「遠く」っていったら遠くだ。
気軽に行ける所じゃない。
だって、パスポートが必要になる所だもの。
だから言ってあげたの。
『よかったじゃない。』
って。
それから、
『頑張ってね。いってらっしゃい。』
って。
そしたら怒られた。
せっかく家に遊びに行ってあげたのに、すぐに帰された。
『俺はネネの気持ちが理解できない。』
って言われた。
ネネは何一つ悪い事していないのに怒ったり、帰らせたりするあなたの考えの方が理解できないわよ。
「僕はネネちゃんの気持ちを知ってるけど、それはネネちゃんがひどいと思う。」
「なんでよ。」
マサオ君はネネの一番の理解者だけど、ネネに共感するだけじゃなくて
相手の気持ちもちゃんと理解して言葉をくれる。
いつだってネネを納得させることができるのはマサオ君だけ。
「どうせいつも通り淡々としたやり取りだったんでしょ?
そんな重大発表に対しても。」
「淡々って。
海外転勤なんてサラリーマンにしたら大出世じゃない。
素直に褒めてあげただけよ。」
ネネの素直な気持ちを言ったら、マサオ君は『まったくもー』なんて言ってため息を吐いた。
「彼氏が遠くに行っちゃうんだよ?
泣いたり、落ち込んだりしたの?
そういう悲しんでる姿を彼氏に見せた?」
「だって悲しくも嬉しくもないもの。
怒られる理由も分からないから、逆に苛ついてるくらいよ。」
思い出せば思い出すほど、段々腹が立ってきた。
そうよ。
なんでネネが怒られなきゃならないのよ。
「好きだから付き合ってるんでしょ?」
「私に居場所をくれる人は皆好き。
でも。
マサオ君は『大』好きよ?
マサオ君が居なくなるのは嫌ー。」
「はいはい、ありがとー。」
呆れた顔で受け流されちゃった。
ネネが好きって言うと大抵の男の子は喜ぶのに。
そんなマサオ君も好きよv
「彼氏はそんな、友達にも負けちゃうような『好き』じゃ納得いかなかったんだよ。
泣いたり、喚いたり…。
そうでなくても祝いの言葉を少し躊躇うとか、悲しむ素振りを見せるとか。
そんな可愛らしい姿を期待していたんだと思うよ。
なのに『はい、そうですか。』てな感じの受け答えで、落胆しちゃったの。」
マサオ君はいつも私に、相手の気持ちを説いてくれる。
なんだかんだ言っても、私の帰る場所はマサオ君のところなのよね。
いつもこんなネネの相手をしてくれてありがとうね。
言わないけど、感謝してる。
***
へーそうだったんだ。
なんて言いそうな顔してる。
よくそれで何人も彼氏ができたよなー、なんて僕は逆に感心してしまう。
彼氏のことを『好き』なんて言っても、結局のところ興味はないんだ。
あ。
だからか。
すぐ振られちゃうのは。
「だって、ネネちゃんだって嫌でしょ?
自分の気持ちと相手の気持ちに天と地ほどの差があるなんて。」
「……」
僕が言葉を付け足すと、いきなり黙ってしまった。
心なしか表情も曇っているかも。
「ネネちゃん?」
「知ってるくせに。」
何を。
聞こうと思ってやめた。
「そんなの慣れてるもの。」
遠くを見つめるネネちゃんの瞳が誰を想っているのか。
彼女がはっきりと言葉にしたことはない。
それでも。
僕は知ってる。
彼女の報われることのない想いを。
悲恋もの。
なんか書いてて、かわいそうになってきます。
ハッピーエンドにしてあげたくなってしまいます。
でも、ここは心を鬼にして!
…笑。
追記
結局ハッピーエンドになりました。
すいません甘い管理人で。
www