「ネネちゃん、彼氏と別れたんだって?」
今日はしんちゃんと帰り道が一緒になった。
「そうよ。」
マサオ君が言ったんだろうなー。
なんだかんだで、5人の中ではマサオ君が一番人付き合いが上手になって。
私たち5人のパイプ役になったりしている。
「ネネちゃんって付き合う人みんな年上だよねー。
好きなの?年上。」
白々しい。
「別に。」
「じゃあなんで?うちの学校にだっていい男はいるでしょ?」
むかつく。
「そうね。いい男はいる。
でもその人も年上しか見てないんだもん。
ネネも年上と付き合えばその人の気持ちがわかると思ったの。」
「男と女の子じゃ、年上に求めるものも受けるものも違うんじゃない?」
私、少しでもあなたの気持ちを知りたかっただけなの。
「じゃあしんちゃんは?」
「うーん。俺は別に。
誰にもなにも求めてないよ?」
なのに私は選ばれない。
「じゃあなんで年上としか付き合わないのよ。」
「女の子だと傷つけちゃうから。」
すぐに返ってきた答えは、私には理解できないものだった。
「傷?」
「うん。
俺には何よりも大切なものがあってね。
誰だってそれより大切にすることはできないんだ。
だからどんな女の子でもきっと寂しくなっちゃう。
大切なものか彼女かを選べって言われたら迷うことは絶対にないから。
だからお姉さんと一緒にいるの。
たくさんの出来事を乗り越えてきたお姉さんは、
『一番じゃなくてもいい』って言ってくれるし、
『そういう哀しい考え方もあるよね』って俺の気持ちを分かって付き合ってくれるんだ。
俺よりたくさんのことを知ってるから学ぶことも多いしね。
あ、これを『求めてる』っていうのかなぁ。」
はじめて聞いた。
しんちゃんの想い。
ただ妖艶な彼女たちと付き合ってるのではない。
そんなこと聞いたら余計に、まだまだひよっこのネネには届かないって思い知らされる。
「大切なものって?
ものじゃなくて人じゃないの?
好きな人がいるんでしょう?」
「そうともゆう。」
お決まりの台詞と笑顔でごまかす。
ネネはそんなふざけた答えを聞きたいわけじゃない。
「誰が好きなの?」
「ネネちゃんは直球だなー。
そうゆうネネちゃんはどうなの?好きな人はいるの?
次に彼氏にする人は決まった?」
わざわざ皮肉交じりに聞くこともないでしょ。
「知ってるくせに。」
「えー?
ネネちゃんが好きな人は、マサオ君でしょー。ボーちゃんでしょー。
それに、俺!」
その笑顔で何回も曖昧にされてきた、私の答え。
「ネネは寂しい。」
「なんで?」
いつから私たちは離れてしまったの?
いつからあなたは届かない存在になってしまったの?
私から離れないでよ。
「しんちゃんは私の知らないところでどんどん大人になっていくんだもの。」
「ネネちゃんだって大人っぽくなったぞ。」
見た目の話じゃないのよ。
「ネネは大人じゃない。
自分の気持ちがコントロールできないんだもの。
諦めなきゃいけないって分かってるのに、諦めきれないの。」
「ネネちゃん。
年上でも良い、同世代でも良い、目の前の人をちゃんと見てごらん。
どんな人にだって魅力はある。
その魅力に気づいたらきっと好きになれるから。
ネネちゃんは人を見る目があるでしょ?
もし悪い奴に引っ掛かっても、俺が退治してあげるから。」
胸が裂ける程の痛みってこういうことを言うんだって思った。
苦しかった。
苦しかったよ、しんちゃん。
「しんちゃんがそれを言うの?
ネネの気持ちを知ってるしんちゃんが?」
「…。」
しんちゃんは微笑むだけで何も言わない。
「しんちゃんはなんで好きな人に告白しないの?」
「聞きたいの?結構ヘビーだよ。」
知りたいの、しんちゃんの想いの重さ。
***
もし俺がその子の傍にいたら。
その子を手に入れたら。
きっとめちゃくちゃにしちゃうんだ。
いままでずっと我慢してきた分を全部ぶつけて、
今までその子が他の男に触れられてきた分の何倍も俺が触れて、
他のことを考える暇なんて与えない。
本当は目の前でその子が他の奴に奪われていくのを見るしかできなくて、
気が狂いそうなくらい嫉妬してるんだ。
新しい奴を見つけたって聞けば心臓が握り潰されそうなくらい痛くなるし、
一人に戻ったって聞けば安心する。
大切だから傷なんて付けたくないのに、
大好きすぎて結局傷つけることになっちゃう。
離れたくないから鎖に繋いで、ずっと人の目に触れさせないようにする。
他に好きな奴を見つけないように。
その子の世界には俺一人いれば充分でしょ?
世界に一人しか縋るものがなくなれば離れていく心配もなくなるから。
…ね?
そんな愛情誰だっていらないでしょ?
こんな愛情ぶつけて嫌われちゃうのは嫌なんだ。
ネネちゃんも、こんなこと聞いて俺のこと嫌いになった?
***
なんて寂しそうな顔をするのよ。
「嫌いになんてなってない。
お姉さんたちがしんちゃんの想いを哀しいものだって言う理由が分かったし、
そういう風に思われている子がとても羨ましくなった。
だって私の世界はもうすでに、一人しかいないもの。
そんな愛で満たされてみたい。」
「…びっくりした。
ネネちゃん、本当に大人になったんだね。
羨ましいなんて言われたのは初めてだよ。」
当り前じゃない。
そこら辺の女とは想いの大きさからして違うのよ。
「大人になったからじゃない。
ネネだから言える言葉よ。
想ってもらえるなら、どんな愛でも嬉しいの。
深すぎる愛なんて、願ったり叶ったりよ。」
「うん。ありがとう。」
嬉しそうに笑う顔は、やっぱりまだあどけない10代の笑顔。
そんなに急いで大人にならなくていいのよ。
もがき苦しんでこその、青春じゃない。
「じゃあしんちゃんはずっと、
この先も告わずにいるの?」
「それはわからない。
いつか嫉妬に狂って子どもの自分に逆戻りするか、
それとも身も心も充分な大人になってその子のことも普通の感情で愛せるくらいになったら、
そしたら告うと思う。」
そんな日なんて来なければいい。
「ふーん。
でもこれだけ女の人をとっかえひっかえしてたら、もう嫌われちゃってるんじゃないの?」
「かもねー。
でも俺の本当を知って嫌われるより、表面上だけで嫌われてた方がいいから。」
もし本当にその子に嫌われちゃったら。
そうしたら。
ねえ?
ネネのところに来てね。
いつまでも待ってるから。
「ネネはいつまでもしんちゃんのこと…」
「うん。ありがとう。」
まただ。
また最後まで言わせてもらえなかった。
しんちゃんの臆病者。
伝わったでしょうか??
しんちゃんを好きなネネちゃんと、好きな子がいるしんちゃん。
スレたしんちゃんはあまり想像できないですよねー;
爽やか少年ですからね;;
今回の文字の配置の仕方読みにくかったですか??
ネネちゃんの言葉→しんちゃんの言葉→ネネちゃんの気持ち
という順番にしたくて。
その順番を強調したいなー。
でも会話文が長くなったから、なんか読みにくいなー。
と思って、思い切って文字位置を変えてみたのですが…。
一応4話完結予定です。
次はボーちゃんと風間君を出したいですね。
せっかくの長編なので、5人全員出させたい。
そのためにはやはりマサオ君を出さなければならないというw
マサオ君は扱いやすくて大好きですww
パイプ役なのでねw