珍しい光景だなーって。そう思ったの。
ボーちゃんが女の子と話してた。
肩で切りそろえられた真っ黒な髪の女の子。
地味と言ってしまえばそれまでだけど、清楚と言えば聞こえは良い。
二人の並んでる姿がお似合いだなんて、死んでも口には出したくない。
…ふん。
ネネらしくもない。
何弱気になっちゃってるのよ!
「ボーちゃん。さっき女の子と何話してたのー?」
振り向いたボーちゃんはいつだって優しい表情。
その顔を他の子に向けてほしくないなんて、ネネって本当我が儘なんだから!
…ボーちゃんの彼女でもないくせに。
「女の子?あー。えっと、14日のことについて話してたんだ。」
「え…それって今月の?」
耳を疑ってしまった。だって、まさか。
「そう。今度の土曜日の。」
「あの子と会うの?」
ネネの不安なんか全く気付いていないボーちゃんは、『当然でしょ』とでも言うように頷いた。
「ネネちゃんには言ってなかったっけ?あの子は僕と…」
「わ!!!」
とっさに両手をボーちゃんの口に当ててしまった。
「ん?」
「わ、分かったから。今のでもう充分…」
ボーちゃんの口から直接的なことを聞きたくなかった。
まだ、心の準備ができてないもん。
ボーちゃんに彼女ができたなんて…。
「えー。そうなの?僕も聞いてないよ?」
「だって学校のない土曜日にわざわざ会うこと自体怪しいのに、14日よ!?
バレンタインデーの日に会うなんて、決定的じゃない…。」
今までずっと幼馴染という関係に縋ってきた。
でも今年は。
今年こそはその関係を壊してでも、ボーちゃんに渡そうと思ってたの。
本命チョコレートを。
レシピがたくさん載ってる本も買ったし、材料も奮発して揃えちゃった。
それなのに。
「ネネとしたことが迂闊だったわ。
まず約束を取り付けておくべきだった。
いや、それよりも彼女の有無の確認を…。」
「あ、噂をすればボーちゃんだ。」
廊下を歩いていたボーちゃんは、マサオ君が手を振ると教室に入ってきた。
「ネネちゃん。さっきの話の続きなんだけど。」
さっきって、私が無理矢理止めたあの話でしょ。
続きなんか聞きたくない。
「ネネちゃんも来てくれる?」
「…え?」
「ぇえええええ!?ボーちゃんそれはまずいよ!!」
ボーちゃんのその言葉に驚いたのはネネより、マサオ君だった。
ネネは、ボーちゃんの言葉の真意がつかめなくて、どうしていいか分からなかった。
つまり、他の子とのバレンタインデートについて来いってこと?
「え?え?どうしたのマサオ君。」
「だって土曜日でしょ!?」
「そうだよ。土曜日の大会。」
「「…えーーーー!?」」
クスクス。クスクス。
ボーちゃん…笑い過ぎ。
せっかく一緒に帰ってるのに、さっきから隣にいるボーちゃんは笑いっぱなし。
毎週月曜日はボーちゃんの部活がないから、ネネと一緒に帰る日なのに。
もう!ツボに入っちゃうとずっと笑ってるんだからー!!
「ご、ごめん。いや、おかしくて…ふはっ。」
「笑い切ってから謝ってくれる?///」
「だって二人ともすごい想像力…くくっ。」
前にも言ったでしょ?2月の第二土曜日に剣道部の大会だって。
って言われたら、何も言えなくなっちゃった。
つまり私が勘違いした子は剣道部の女の子で、会話の内容はただの部活の打ち合わせだった。
結構大きな大会で、うちの学校の剣道部は強いから、応援に行く人も多い。
私も毎回行ってる。
でも、聞き逃してしまったのはきっと、バレンタインのことをあれこれ考えていたから。
それに、第二土曜日じゃわからないもん!
ちゃんと2月14日って言ってよ!!
なんて言い訳ばかり並べてもしょうがない。
けど、想像だけであれだけ焦った自分が恥ずかしい。
少し早足で歩いていたら、ボーちゃんに後ろから手をつかまれちゃった。
「ごめんね、許して?もっとゆっくり歩いてよ。」
「…。手、そのまま繋いでくれたら許す。」
「ん。」
ボーちゃんは誰にだって優しいけど、こんな我が儘を聞いてくれるのはネネにだけであってほしい。
幼馴染とか、我が儘姫とかにしか見てもらえてないだろうけど、やっぱり彼女になりたい。
いつだって、何の理由もなく手を繋げる存在でいたいもの。
「で?」
「何?」
「やきもち妬いてくれたってことは、バレンタイン期待してもいいのかな?」
「や!やきもちなんて…!///」
そんなこと言ってない!
でも図星だから言い返せない。
「ネネ以外の女の子からのチョコを貰わなかったら、あげる。」
「うん、わかった。」
ボーちゃんはたまに意地悪になる。
ネネはボーちゃんの前ではいつも通りにふるまえなくなる。
でもそんな関係性、ネネは嫌いじゃない。
だって、こんなボーちゃん他の子は知らないもの。
ねえ。
ボーちゃん。
期待してくれているってことは、私も期待していいのかな?
ネネは他の子と同じ存在じゃないって。
ボーちゃんにとってただ一人の存在だって。
幼馴染の関係を壊してもいいって。
ねえ。
ぼーちゃん。
好きだと告げてもいいですか?
ボーちゃんは正統派日本男児!!ということで剣道部イメージだったのですが、
しんちゃんには剣道エピソードがあるということを忘れていました!!
どちらかというと剣道はしんちゃんのものじゃん!!;
でもそこは手を目にかざして…見ないことにー。。
しかもこんな時期に大会とかないですよね。
捏造もいいところ。
なんか、思いっきり片思い!な感じを書けない。
絶対付き合うじゃん、これ!てのばっか。
難しす。