「見てよこれ!」
と言われて見せられたのは可愛いラッピングが施されたチョコレートの類でいっぱいのマサオ君の鞄。
今日は2月13日だというのに、チョコレートは各教室で飛び交った。
それもそのはず。
今年のバレンタインはなんと土曜日。
学校生活が全てだという学生において、今年は13日の金曜日が事実上のバレンタインデーとなっていた。
今となっては、友チョコもバレンタインを楽しむ一つの方法だったから、それこそ男女の垣根などなかった。
一日中続いたチョコの渡し合いは放課後を迎えて、やっと終わりを告げた。
教室に誰も居なくなって、静かになった。
女の子の波も途切れたし帰るわよ、と言おうとしたらマサオ君が言葉を発したのだった。
そんな不細工な鞄、嬉しそうに見せびらかしちゃって。
むかつく。
人懐っこい?
気が利く?
格好良い?
ふん。
随分と良い評判ばかりのこの男子生徒。
男女問わず友達が多い、なんてどこぞの少女漫画よ!と突っ込みたくなるような存在。
でも蓋を開けてみたら、友達ばかりじゃなく、彼を狙ってる子も多かった。
その項目全部、ネネがいなかったら未来永劫マサオ君が手に入れられなかったものばかりじゃない。
ネネの一番傍にいる男の子だからこそ、ネネの思い通りに育てたのに。
なんで他の子たちのお気に入りなんかになり下がっちゃってるのよ。
「何個もらったの?」
「27個だよ。」
さっき鞄の中身を見たとき、明らかに義理にしか見えないものも確かにあった。
けど。
本命にしか見えないチョコの方が断然多かった。
そのリアルな数字。
それを自慢なんかの為ではなく、当然のことのように律儀に覚えてる彼の頭。
きっと誰がどれをくれたのか、ラッピングを見るだけですぐ分かっちゃうんだろうな。
マサオ君がネネ以外の女の子がくれたものを、そんなに大切にするなんて許せない。
ネネ以外の女の子を見るなんて許さない。
ネネ以外の女の子がマサオ君の頭の片隅にあることすら耐えられなかった。
「全部捨てて。」
自分でも驚くほど低い声で言ってしまったと思った。
しかも、思いの外罪悪感に苛まれた。
ネネの言葉に一瞬驚いたような表情を見せたけど、目の前の人はすぐにいつもの顔に戻って笑った。
「いいよ。」
いつも通りの軽い返事をしてから教室のゴミ箱まで鞄を持って歩くマサオ君。
そんな答えが返ってくるなんて思ってなかった。
だって、そんな非人情的なことをするなんてマサオ君じゃない。
ゴミ箱の上に自分の鞄ごと大量のチョコを持って行った。
その手を離したら…。
「鞄ごと捨てちゃえば、ネネちゃんの気も済むかな?」
「やめて!そんなことしたら嫌いになるわよ!!」
ネネの馬鹿。
いつも通りじゃなかった。
マサオ君はすごく悲しそうに笑ってたんだ。
27人もの女の子の勇気を捨てようとしたその右手に、マサオ君の心なんてこもってなかった。
ネネはマサオ君のその右手に手を添えて、ゴミ箱から遠ざけた。
そしてその手を叩いた。
パチン。
「…嫌いになられるのは、困る。」
「ネネが教えたこと忘れたの!?
マサオ君は男の子なんだから、女の子からの好意は一つ一つ大切にしなきゃいけないの!
それを無碍にするなんて何様よ!!」
「うん。」
ネネは怒ってるのに、理不尽なことばかり言ってるのに。
それなのにマサオ君は嬉しそうに頷いた。
へらへらしてるとまた怒るわよ!
「でも僕幸せなんだ。ネネちゃんは優しい子だって改めて思えたから。」
僕は何でも知ってるよ、とでも言うように余裕な笑みのマサオ君。
全部見透かされているようでさらに苛つく。
「帰るわよ!」
「はーい。」
他の子からのチョコを持っているマサオくんなんて見たくはなかったけど、
人の気持ちを踏みにじるマサオ君はもっと見たくなかった。
「でも僕、一番欲しい子から、チョコを貰えてないって知ってた?」
まったく。
チョコなんてそれ以上必要なの?
丸々と太ったマサオ君も、ニキビだらけのマサオ君も見たくないわよ?
私がいれば充分じゃない。
だから、マサオ君の両頬に掌をおいて、そのまま顔を引き寄せた。
おでこをくっつけて、呪文を唱える。
「あなたはだれのもの?」
「え?ネネちゃんのだよ。」
「うん、そう。それだけで充分でしょ。」
9文字の言の葉に、キスのオプションを付けてあなたに届ける私の気持ち。
不器用だけど分かってね。
チョコの代わりに甘い甘い鎖をあげるから。
~~~おまけ~~~
「それにしても彼氏にチョコを渡さない女の子って初めて見たかも。
去年はちゃんとくれたじゃん。すっごいおいしいフォンダンショコラ!
あれは絶品だったなー。」
「あら。フォンダンショコラの方が良かった?
今年はチョコレートの比にならないくらい甘くとろけそうな一夜をプレゼントしようと思ったのに。」
「ぇえ!!!!!!!!!!???///」
「チョコの代わりにネネを、マサオ君の好きなように食べてもらおうと思ったのに。」
「ぇぇぇええええええええ!!!!!!!!!!」
「今日うち、親帰って来ないんだー。」
「ひーーーーー///////」
「どっちがいい?」
「一夜の方で!!!」
「(ふふん。楽勝♪)」
「(ぅをーーーー!まじですか、これ!!好きなようにって…!!)」
マサオ君が他の子から幾つかチョコを貰ってくるであろうに、何故彼女である自分がその子たちと同じようにマサオ君にチョコを作らないといけないのか。
そんなことを自問自答したら、作る気が失せた姫。
さすがに27個は予想外だったけど、実際姫はチョコが大好きだから、マサオ君にたくさん分けてもらって食べているはず。
材料費は浮いたし、手間暇も掛からなかった。
自分の身を一晩捧げることくらい安いもんだと、安直な考えでマサオ君を喜ばせてしまった、気まぐれ姫でした。
一方、姫の言葉に舞い上がったマサオ君。
ネネ嬢の家に着くなりサカりました。
あんな殺し文句言われちゃたまらんですよね。
しかし足蹴にされるマサオ君。
一緒にお風呂に入ろうと誘い、断られるけど「さっき好きなようにって言ったじゃん!」と懇願してなんとか一緒にお風呂に。
好きなように、と言われても姫の機嫌を損ねないようにしつけられているので、ここに書けないような鬼畜な行為はしませんでした。
ただちょっといつもより長くいちゃいちゃしたり、いつもより多くの回数をこなしたり、いつもしたことのない体位を試してみたり。に留まりました。w
ただそれだけでもマサオ君は幸せなのでありました。
うんうん。
なんだかんだ仲良しなのよ。
よく分からなくなりました。
何を書きたいのか、焦点を絞れてません。
<おまけ>のいちゃこいてる二人が好きです。
あと、相手のほっぺたに両手をあててる姿が、男女問わず好きです。
ただ当ててるだけじゃなく、少し強引に引っ張られるくらいの方が。
というより、自分でするのもされるのも好きv
次回は漫画描きたい。