知ってたよ。
君が僕のことなんか見てないって。
誰のことを見てるのかって。
そんなことくらい。
「あ、」
廊下でネネちゃんを見かけた。
幼馴染の僕たちだ。
顔を合わせれば声くらい掛ける。
それは当然の、ごく自然なことだった。
「ネネちゃ…」
名前を最後まで呼ばせてもらえないうちに、ネネちゃんは僕の存在に気づいて、今来た道を走って戻っていってしまった。
明らかに気まずそうな表情を浮かべて。
目なんて、合った瞬間に逸らされた。
残された僕には『ぽつーん』なんて効果音が良く似合う。
顔を合わせづらいのは分かるけど。
「(逃げなくてもいいじゃんかー。)」
小さい頃から見てきたネネちゃんに、あんな顔されたら僕だって傷つく。
そんな気まずそうな顔今まで向けられたことなんてなかったのに。
友達。
幼馴染。
腐れ縁。
そんな関係を壊してしまったのは紛れもなく僕だった。
「(告わないって決めてたんだけどなー。)」
3日前、告白をした。
僕が。
ネネちゃんに。
もちろん結果はあっけなく玉砕。
だってネネちゃんには好きな人がいるから。
『ごめんなさい。マサオ君とはずっと友達でいたいの。』
これのどこが友達だよ。
なんて走り去っていくネネちゃんを責める権利は今の僕にはないのだけれど。
それでもやっぱり。
前みたいに笑って話せる日を待ち望んでる。
振られたことは、正直辛かったよ。
でもそれは、わかってたことだし。
それより今の状況の方がもっと辛いと思ってしまう。
あの声が、笑顔が、傍に無いことがすごく寂しい。
言わなきゃよかったかな。
なんて後悔の気持ちが半分。
あとの半分?
それはもちろん言えて良かったと思う気持ち。
ネネちゃんに僕の気持ちを知ってもらえてよかった。
わかってるよ?
僕の肩の荷が少し軽くなった分、ネネちゃんに背負わせてしまってること。
それでもさ。
今回くらいは許してほしい、なんて思ってしまうんだ。
僕の気持ちなんて露ほども知らなかったネネちゃんに。
僕からの最初で最後のイジワル。
短いSSがやっとできました。
もともとは漫画にしようと思っていたこのお話。
でもメモ書きしてみたら、走り去っていくネネちゃんとか描けないし。
マサオ君の気持ちばかりで絵が動かないので、SSにしてみました。
そうか。漫画用に考えたお話だから短いのかー。うん。
結構端折ってますね。
まあいっか。