女は化ける。
そんな名言を残したのはどこのどいつだ。
もとから自分自身を熟知していたネネちゃんが可愛くなるのに時間はかからなかった。
最も可愛く、親しみやすく見せるお化粧を施して。
サラサラツヤツヤの二つ結びの髪を靡かせて。
制服のスカートからのびる細い太ももに、半袖のYシャツからのぞく二の腕はともに真っ白。
可愛くなれば、当然の如く男どもが寄ってくる。
しいぞう先生とか黒磯とか、昔から年上好きのネネちゃんは、今もその嗜好が変わっていないようだった。
俺なんかより断然大人な男と付き合い、どんどん綺麗になっていくネネちゃん。
そしてネネちゃんは今の彼氏ととてもいい関係を築いている。
なのに俺はいまだに生傷の絶えない生活を送っていた。
「なんでそんなに傷ばっかりなのよ。高校生でしょ?」
「だって俺サッカー部のエースなんだぞ!女の子達からもキャーキャー言われてるんだぞ!!」
「なのに、いまだに彼女は作らないのよね?」
「う…。」
「好きな子でもいるの?それともまだななこさんの後を追ってる?」
泥だらけの俺と華やかな彼女。
なんだか自分がとてもみじめに思えて仕方がなかった。
小さい頃、何の意識も無しに繋いでいたこの手は、今ではとても触れられない。
「ななこさんはもうとっくにあきらめたけど、好きな子はいる。」
「そうなの?誰?またお姉さん?」
「違う。同い年の女の子。」
「えー!!本当に?しんちゃんも変わったのねー。小さい頃はお姉さんしか目に入ってなかったのに。」
俺は何も変わってない。
だって小さい頃からネネちゃんを思う気持ちは変わらない。
だからこそいつだって俺の一番近くに居る女の子はネネちゃんだけなんだ。
「そっかー。そうなんだ。…私ね?」
「ん?」
「私、実は…。笑わないでね?」
「うん、笑わないぞ?」
「しんちゃんのこと好きだったのよ。」
言葉が出なかった。
過去の気持ちとして告げられたその言葉。
俺の現在進行形の気持ちはどうなるの?
「びっくりしたでしょ?小学校くらいからかな?
最初はね、しんちゃんに振り向いて欲しくて綺麗になろうって思ったの。」
そうやって笑う横顔を俺にくれればいいのに。
ネネちゃんが見据える先には俺には見えない奴がいるんだ。
「なのに何かの縁であの人に会っちゃったでしょ?」
ネネちゃんは巡り巡って、初恋の君であるしいぞう先生と再会した。
そして二人は付き合うことになり、今に至る。
「ネネちゃんはそれで幸せなんでしょ?」
「うん。綺麗になろうと思ったきっかけをくれたしんちゃんには陰ながら感謝してるのよ?」
はにかむネネちゃんは何よりも綺麗だったけど、そんな顔俺は知らなかった。
初めて見た君の笑い方に、胸が悲鳴をあげた。
「ネネちゃんが綺麗になったのは、俺のおかげなんかじゃないよ。
しいぞう先生と幸せな時を過ごして、満ち足りているからだと俺は思うぞ。」
「そう、かな?じゃあそういうことにしておくわ。
あ!そろそろ行かないと!今日も駅前で待ち合わせしてるんだ。」
「そう。じゃあね、ネネちゃん。」
「うん!今度しんちゃんの好きな人も聞かせてね!幼馴染のよしみで協力してあげちゃうんだから!
ネネがついていれば百人力よ?」
「ありがとう。ほら、時間大丈夫なの?」
柄にもなく泣きそうになっただなんて言ったら君はどうしたかな。
ネネちゃんが俺のこの恋を協力することなんて絶対にできないんだ。
だってそれはネネちゃんの幸せを壊すことにつながるから。
あの頃から一歩も進めていない俺。
情けなくて、すべてを放り出したくなった。
サッカーを頑張ったのだって、ネネちゃんがスポーツできた方がかっこいいって言っていたからだし。
恋にはタイミングが必要だなんてよく言うけれど、俺くらいその言葉を痛感している人間なんていないのではないかと思うくらいだった。
変わってく君、変わらない俺
君を綺麗にしたのは俺じゃない
久しぶりのクレしん。
お題に挑戦です。
なんだかしんちゃんが全然明るくならなくて困りました。
ネネちゃんは初恋の相手を彼氏にしているので、結局のところ変わったのかどうなのか分からなくなりました。
そしてなぜかしいネネになってしまいましたw
この間youtubeさんで黒磯←ネネのお話(公式ですよ!w)を見てからそれ関係のを書きたくなったのですが、
今回はしいぞう先生になってしまいました。
そもそも「しいぞう」の漢字がわからず。
調べるのも億劫でしたので平仮名表記で失礼しますw