「…え。たえ。」
「あ…。」
「妙?大丈夫か?ぼーっとしすぎだぞ。」
「…はい。大丈夫です。…ごめんなさい、土方さん。」
この『ごめんなさい』に、大好きなあなたは気付かない。
どれだけの罪を背負っている『ごめんなさい』なのか。
きっと、きっかけは初めての甘いキス。
大人びた煙草味ではない、その砂糖菓子のようなキスに私の心は奪われた。
勿論何度だって否定した。
私は土方さんと付き合っているという現実。
銀さんは収入だって安定しないマダオだという現実。
土方さんと銀さんをいくら比べたって、答えは同じ。
土方さんの方が素敵な男性だった。
銀さんが勝っている所なんてありはしなかった。
…。
…それなのに。
それなのに、私の心は言うことを聞いてくれない。
どれだけ理路整然を尽くしたって、敵わない。
一番大切な根源が、誰を欲しているか。
私の心はなぜか銀さんを欲していた。
あの日以来まともに会話ができていない。
あの日とは勿論、銀さんと唇が触れ合った日。
顔を合わせることすらしない彼。
話しかけようとすれば、他愛もない話ですぐにかわされてしまう。
だから余計に。
銀さんにちゃんと会って話をして、それから自分の気持ちに、納得のいく答えを出したかった。
神楽ちゃんも新ちゃんも居ない万事屋。
そんな時間帯を狙って私は銀さんに会いに行った。
「何しに来たわけ?」
むすっとした顔で告げる銀さん。
ほら、まだ目は合わない。
「確かめたいことがありまして。」
「なんだよ?さっさと済ませて帰れや。」
「銀さんは好きな女性はいらっしゃいますか?」
「…いらっしゃいますよ?」
「どんな方ですか?」
「…。」
黙りこくる銀さん。
さらに苛々が増しているようだ。
「何それ?俺の気持ち知ってて言ってるわけ!?なんなの?俺を試してるの?俺は言うつもりなんてサラサラな…」
「私、今心を惹かれている人がいるんです。」
「…。」
『聞きたくねぇんだけど』とぽつりと彼が言った一言に、私は無視を決め込んだ。
「何故私がその人に惹かれるのか。理論づけてみようと思ったのにまったく上手くいかないんです。その人らしさをあげればあげるほどマイナス面ばかり出てくるんです。なのにどんどん心は惹かれる一方で。」
「マイナス面ばかり?そうか?人望は厚いし、刀の腕はいいし、なんてったって副長という役職に就く野郎じゃねーか。」
「…違います。人望は厚いし、刀の腕は確かにいいけど。マダオで万年金欠で糖尿予備軍で天パで死んだ魚の目をしていて賭博もするしお酒にも弱いけど。」
「…は?ちょ、ちょっとま…」
「でも何故だか無性に心惹かれるんです。」
「え?え?」
「私にはお付き合いしている人がいるというのに。その人よりもダメなところばかりが目立つというのに。」
「…た、え?」
「それなのに何故なの?どれだけ理屈を並べたって、心をコントロールできないの。」
「妙。」
「好きなのに。土方さんのこと大好きなのに。それ以上に好きになってしまった。愛してしまった。」
「妙!」
「銀さん、貴方を…。」
「ごめん。俺が悪かったよ。告うつもりなんてなかったのに、曖昧にキスなんかしちまって。お前の心を揺さぶって、悪かった。俺が男らしくなかった。」
ふと気付けば頬を伝う涙、かち合う視線。
それを拭ったのは自らの手でも、ハンカチでもない。
ごつごつとした、私とは違う体温をもった、銀さんの手だった。
「銀さん…。」
「好きだよお妙。ずっと前から好きだった。土方なんかに取られるずっと前から…」
抱きしめられた。
自分の中の矛盾が全て消え去った。
安心できる私の居場所は、ここにあった。
恋は頭でするものじゃないって、聞いたことある。
私が女で、貴方が男だから。
磁力のように惹かれてく。
理屈じゃない。
貴方じゃなきゃだめなの。
なんだかうーん。
ノープランノープラン。
3話目にしてもう銀妙くっついちゃったけど、10話までもつかしら^^;
背景描写、心情描写全くなくてごめんなさい。