え?
帰ってこないの?
いつだって君は僕の所に帰ってきてたのに?
今回もそうなんでしょ?
冗談なんでしょ?
「本当よ。」
今まで、彼女のそんな表情を見たことがなかった。
彼女の真剣な顔はいつもより数倍綺麗だった。
だって。
瞳に涙を溜めながら強がっているから。
「嘘。」
「本当なの。」
ネネちゃんの表情を見れば言葉なんかなくたって分かる。
なのに何度も確かめてしまうのは、嘘であってほしいと心から願っているから。
いつから?
いつから俺はネネちゃんの一番じゃなくなったの?
俺よりあいつの方が良いの?
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
「ごめんなさい。」
嗚呼、これで本当に最後なのだろう。
ネネちゃんが謝っている。
いつだって自分に自信を持って生きている彼女が、自分の非を認めることなんてめったにないから。
俺達の関係は中学生の頃から始まった。
中学2年生になって、ネネちゃんに初めての彼氏ができた。
一つ上の先輩で。
思春期で盛りのついた彼は、付き合って間もないうちにネネちゃんに体を求めてきた。
公園のトイレで。
『逃げてきたけどすごく怖かった。』
『その汚らわしさが何よりも嫌だった』
そう言いながら泣くネネちゃんは、俺の部屋にいた。
俺だってその先輩に負けず劣らずの盛りのついた中学生です。
短いスカートから覗く細い太ももとか、二つ結びの間から見えるうなじとか、第二ボタンまで開いた胸元とか。
意識し始めればそこはかとないわけで。
涙目で、上目使いで俺を見るネネちゃんにタガは外れた。
キスをした。
抵抗されないのをいいことに、深い深いキスをした。
そのまま床に押し倒して、ワイシャツのボタンに手を掛けた。
顔を離してネネちゃんの表情を見ると全く嫌がってなかった。
「ネネちゃん?嫌がらないの?俺止めないよ?」
「うん、いいの。何故だか全然嫌じゃないから。」
「床じゃなくてベッドでしよっか?」
「うん。」
なんて言って俺に身を預けるネネちゃん。
勿論俺は興奮した。
ずっとずっと、小さい頃から好きだった女の子が無防備な姿で俺の下に居るんだから。
手加減なんてできるほどの場数は踏んでいない。
ただの馬鹿な男子だ。
めちゃくちゃに壊して泣かせてしまったけれど、服を着るネネちゃんは、もういつも通りだった。
「明日しんちゃんのクラス漢字テストでしょ?ちゃんと勉強しなさいよ。」
ネネちゃんは、まだ寝そべっている俺をはたき起こした。
えっちしたすぐ後にそんなこと言うんだ。
どきどきしてるのは俺だけなの?
「じゃあ帰るわね。」
「もうちょっといればいいじゃん。体辛そうだよ?その間に俺に勉強教えてよ。」
そう言って、帰ろうとして鞄を持ったネネちゃんの手を掴んだ。
そんなことがあってから、俺たちは以前よりも断然仲良くなった。
ただ、付き合うことはしなかった。
どちらも『付き合おう』なんて言わなかったし、お互いに好き合っていることは分かっていたから。
ネネちゃんはあれからすぐに彼氏と別れたけど、また新しい彼氏を見つけた。
でも俺は何も言わなかった。
言おうと思ったよ。
『俺だけじゃ物足りないの?』って。
でもその前に、
「しんちゃんは何も心配することはないんだからね?ネネはしんちゃんのこと大好きよ?」
と言って頬にキスを落とされた。
そのままネネちゃんの唇は俺の唇に。
そして首筋をたどって、そのままワイシャツのボタンは一つずつ外されて。
此処はどこだっけ?と辺りを見回すと俺の部屋で。
それなら遠慮はいらないと思い、ネネちゃんを抱いた。
俺との関係は切れないってことだ。
彼氏がいたっていなくたって俺たちに変わりはなかった。
時々他の奴がネネちゃんの体につけた跡を見て俺が苛立つと、ネネちゃんはすごく優しく包んでくれた。
そして、
「一番好きなのはしんちゃんだけよ?」
なんて、魔法の言葉で俺を魅了する。
心惑わされるのは、嫌いだ。
でもネネちゃんなら何でも許せてしまう俺。
甘いだなんて、言わないで。
結構前から温めていた長編ネタ。
タイトルに迷ってお題サイト様から拝借してきました。
しんネネの悲恋です。
さらに、ネネちゃんがひどい女の子になってます。
しんちゃんがしんちゃんじゃないような気がしてます←一話目から(;)