不器用な貴方の優しさに守られている

久しぶりに乗ったバイクの後部座席。

もう夏だから、と油断したのが間違いだった。

さすがにまだ梅雨明けしていない江戸の夜風は肌寒かった。

 

 

 

 

 

すまいるからの帰り道。

銀さんが迎えに来てくれるのはいつものことだった。

いつもは銀さんも飲んでいて、二人で歩いて帰ることがほとんどだった。

でも今日は珍しくバイクと一緒に待つ銀さんの姿が見えた。

 

「あら、珍しい。今日は飲んで来られなかったんですか?」

「あぁ。今日はお前と一緒に飲もうかと思ってな。」

「ふふ、いいですね。じゃあ何かおつまみでも作ろうかしら。」

「いやいやいや!酒もつまみも俺が用意してあるからね!!!そんな心配は無用だから!!!!!!」

 

確かに今日は勤務時間が短く、いつもより早く上がれる日だった。

だから私自身もあまり酔っていない。

早く帰って銀さんと二人でゆっくりとお酒を飲むのもいいかもしれない。

バイクに跨りしばらく走ると、夜風の冷たさに驚いた。

バイクに乗っているだけだと、全然体は動かさないし、酔いも回ってないから体も熱くない。

いつもは歩いて帰ってるから、まだまだこんなに寒いだなんて気づきもしなかった。

そういえば今日は天気予報でも『過ごしやすい気温で…』なんて言っていた。

だから今日はこんなに寒く感じるんだ。

 

「銀さん、もっとゆっくり走ってください。」

「あ?何でだよ。」

 

そう言って道路の端にバイクを停め、銀さんは座ったまま後ろに座る私を見た。

 

「風が冷たくて、すごく寒いんです。」

「何、お前熱でもあんの?」

「いえ、そういう訳ではないと思うんですけど。アイスを食べて体が冷えてしまったからかしら?銀さんは寒くありませんか?」

 

私の最後のお客さんが、仕事を上がる前にとアイスを注文してくれたのだった。

それを美味しく頂いたのが、いけなかったのかしら。

 

「いや、俺は別に寒くないけど。あ、じゃあこれ着とけや。ほら。」

 

そう言っていつも着ている、意味があるのかないのか分からない着流しを渡され、羽織った。

銀さんの温もりが残っていてとても温かくなった。

でもやっぱり男物の着物。

いくら私が比較的身長が高いからと言っても、限度がある。

裾は持ち上げないと引きずってしまうし、客観的に見てなんだかとても不格好のような気がした。

 

「何そんな渋い顔してんの?ほら、行くぞ。早く乗れ。」

「なんか、嫌だわこれ。可愛くない。」

「はァァァァ!?何贅沢言っちゃってんのォォ?可愛くあってたまるかよ!!!寒いんだろ?あと少しだから我慢してろや!」

「嫌だわ、こんな恰好。誰かに見られたら恥ずかしい。」

「はっ。誰もお前のことなんか見てねぇ…」

「うふふふふ?」

「やめろォォォ!!!その固く握りしめた拳をしまって下さいィィ!!!!すいませんっしたァァァ!!!!!」

「まったく。…でも、そうね。このまま寒さを我慢するよりかは良いかしら。こんな真夜中で、人通りも少ないし。あと少しだけ我慢するわ。」 

「はいはい、すいませんねーだっさい着物でー。」

「あら、そんなこと言ってないわ。人それぞれ似合う似合わないがあるんだから。この着物は銀さん以外似合わないわよ。銀さんの為にあるような物じゃない。」

「…。」

「何?」

「いや、別に…。(さらっと恥ずかしいこと言うよなー、こいつ。)」 

「銀さん、ついでにコンビニに寄ってイチゴ牛乳とダッツでも買っていきますか?」

「お、いーねー。イチゴ牛乳割り作ってくれんの?」

「えぇ、勿論お酌させていただきます。いつも送り迎えありがとうございます。」

「や、それは俺が好きでやってるだけで…。お前から改めて礼を言われると照れるって言うかなんというか…。」

「何ですか、銀さん?声が小さくて良く聞こえなかったんですけど。」

「な、何でもねーよ!さ、早く乗れ!ちゃんとしがみついて俺の背中から体温奪ってけコノヤロー。風邪なんてひかれたら新八に殺されちまうからな。」

「ふふ、ありがとうございます。」

 

走り始めたバイクは、先程より随分とスピードは落ちていて。

貴方の背中に寄り添って、温もりを感じた。

身体には銀さんの着流し。

私はいつだって、不器用な貴方の優しさに守られている

このお礼は、すまいるキャバ嬢特製の美味しいお酒で返させてね。

 

「いや、そんなんより、銀さんもお前の温もりが欲しい。志村家に着いたら、まず肌と肌を重ね合わせたいんだけど。」

「うふ。無駄に目と眉を近づけて、何をほざいているのかしら?」

「またでた、その拳!!!!暴力反対ィィィ!!!!」

 

 

 

キリ番3000・コジロウ様からのリクエスト小説『銀妙』です。

実は密かにキリ番始めてました^^(nikki参照

もし今後踏んだ方がいらっしゃれば、お気軽にリクしていってください。

 

いやーなんかオチてないって?

はい、すいません(>m<;)

つい最近の実体験を元に作ってみたんですが^^;

銀さんの着流しを羽織るお妙さんって萌えポイントのはずなのになー。

甘くもなく切なくもなく、中身もない内容になってしまいました(>ω<;)

力量不足ですいません!

コジロウ様!3000hitありがとうございました!!!