人恋しいのは私も同じ

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後半は蜘蛛篇後のお話になります

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「銀さん?どちらに行かれるんですか?また長谷川さんと安いお酒でも飲みに行くんですか?」

 

月詠に吉原に遊びに来いと言われ、出かけようとした時だった。

万事屋の玄関前でお妙と鉢合わせた。

何か用かと聞けば神楽に用があるらしい。

 

「俺にだってなー長谷川さん以外にも酒の相手くらいいますー。」

「どなたですか?あ。土方さんとか?」

「お前なー俺の知り合いが長谷川さんと真選組しかいないと思ってんだろ?お前の知らない所で俺もいろいろ交友関係広げてるんですー。」

「あらそうですか。」

「そうですー。タダ酒飲ませてくれる女くらいいるんですー。」

「…新ちゃんの言ったとおりだわ。」

「あぁん?」

「爛れた恋愛しかしてないのね、銀さんって。」

「いやこれは恋愛じゃないからね?…普通に仕事相手だから。」

「あらそうですか。…まぁ私には関係ありませんけど。神楽ちゃんの教育に支障ない程度にしてくださいね。」

「…チッ…(つめてーの)」

 

 

 

***

 

 

 

吉原で戦うのは二度目だった。

最初の鳳仙の時も、今回の地雷亜の時も死にそうな思いをした。

何度も『あぁ…今度こそやばいかも…』なんて意識が薄れゆく頭で思った。

そんな時決まって浮かんでくるのはあの…。

 

あの時からだ、あの紅桜の剣に貫かれて看病されて以来、何故か必ずお妙のもとに帰らなければならないと思うようになってしまった。

お妙は俺達の帰りを待ってくれているものだと思い込んでしまっている。

そして安心して静養できる場所となっているのだ。

 

あの一件以来、長い間連絡もないまま家を空けることになると決まってお妙は包帯や布団の準備をして待ってくれていた。

何があったのか、無理に聞き出すこともせずただ『お帰りなさい』と言って受け入れてくれた。

傷の治療も手慣れたもので、お妙の傍では気を張らずにゆっくりと休むことができた(…まぁ食事面に難はあったが)。

 

でも俺は知ってる。

お妙はいつも笑顔でボロボロの俺たちを受け入れてくれるが、人一倍心配してくれていること。

待っているだけなんて不安で不安で仕方がないってこと。

いつも死と隣り合わせの俺達を誰よりも思ってくれているのは、他でもないお妙だということ。

 

そして俺はいつの間にかそんなお妙に惚れてしまっていた。

前までは心配させたくないという気持ちで家に帰っていたが、今は違う。

勿論心配させたくないのは山々だが、それよりもただ俺が会いたい、という気持ちが先行していた。

お妙の顔を見られるだけで俺は安心できるようになっていた。

 

 

 

「なんじゃ、そんな怪我を負っているのに帰るというのか?部屋なら腐るほどある。この吉原でゆっくりと傷を治していくと良い。腕の立つ医者もおるぞ。」

「んーいいや。帰る。応急処置はしてもらったし。あ、でも車とか出してくれたら助かるな。歩くのはさすがにだるいわ。ガキども二人も寝ちまってるし。」

「それはいいが…大丈夫か?遠慮はいらんぞ?」

「いや本当大丈夫。銀さん自分の枕じゃないと眠れないから。とても繊細だから。」

「じゃあ傷の手当てのために毎日医者を通わせよう。」

「いやいらねーだろ。俺にだって世話やいてくれる女くらいいるんですー。」

「そう…なのか。…もしかしてぬし、その女子に会いたいがために無理してでも帰るなどと言っておるのか?」

「違ぇからァァァ!!」

「顔が真っ赤じゃ。」

「だーかーらー!前にちょっと無茶したところ見られてから監視されてるわけ。早く顔出しに行かないと死んだと思われて俺の存在消されかねないからね?」

「…ふむ。その女子はぬしのやんちゃを見守ることができる慎ましやかさを持ち、尚且つ心配性で主の帰りを心待ちにしているのだな。」

「ねぇー!!!日本語通じる!?誰か通訳いねーの!?」

「でも…大切にするべきだな。戦う者にとって帰るべき場所があることは大切なことだ。生命力にも繋がる。」

「ふん。…とにかく早く帰らねーとうるせーゴリラ女がいるんで、帰らせてくれ。そもそもお前だってゆっくり休まなきゃいけねーだろ。」

「ふ…わっちのことは心配するな。待っておれ。今車を手配しよう。」

「おう。わりーな、頼むわ。」

ぼそっ

「       」

 

***

 

この銀髪天パの男。

この男の前だとどうも調子が狂っていた。

銀時に会うときは何故かいつもより身綺麗にしてしまう。

銀時に会ったときは何故か百華の頭であることを忘れてしまう。

 

「銀さんに会ってる時は普通の女の子みたいよ」

 

なんて日輪に言われたりもした。

この感情は何なのかと考えた日もあった。

初めての感情に戸惑った。

きっとこれが俗にいう「好き」という気持ちなのかもしれない。

そう気付いた時にはもう遅かった。

 

『俺にだって世話やいてくれる女くらいいるんですー。』

 

まったく。

あれだけ思わせぶりなこと言っておいて、勝手なことを言うな。

最後にぬしが呟いた言葉を聞き逃すことなんてできなかった。

 

『あいつ、泣いてるかもしれねーし。』

 

 

人恋しいのは私も同じ

 

(『一人にしない』って言ったくせに。)

(できもしないこと言うなばーか。)

 

 

 

 

キリ番5555・無名様からのリクエストで『月→銀→妙』でした!

月詠絡みが皆様お好き?w

5000hitと5555hitが続けて月詠が絡んでいたので、ちょっと展開が似てしまった(>m<)

文才なくてすいません!

そして無名様!わざわざ拍手から改めてリクしてくださってありがとうございます!

映画化記念ということで紅桜にも絡めてみました^^

無名様!5555hitおめでとうございます★