数十分たってネネちゃんが話し始めた。
「ネネ、優しくなった?」
「うん、お姫様な性格は変わらないけど雰囲気が柔らかくなった。」
「…うん。あのね、すごく優しい人なの。ネネがむやみに傷つけていい人じゃない。」
ネネちゃんは俺と関係をもったあの頃から次々に男の子と付き合っては別れていったけど、今付き合ってる人とはもう1年も続いているらしい。
「なにそれ。同情?」
「違う、けど…」
同情で付き合い続けていけるのなら、俺だって。
俺だって…。
「…!迷ってるなら俺と…俺と離れるなんて言わないでよ!俺と…あいつなんかとじゃなく俺と結婚してよ!ただの紙切れとか…、そんな形式的なものには何の興味もないけど。ネネちゃんをつないでおけるなら、俺はなんだって…」
「やめて!…これ以上私の気持ちを揺さぶらないで。…辛いの。私だってしんちゃんのこと、泣いちゃうくらい大好きなの…。」
「なら…!」
「すごくいい人なの。ネネが悪いの。ネネが弱いから、断ることなんてできないから。だって理由が見つからないでしょ?あんなにまっすぐ気持ちをぶつけてくれているのに。」
「俺のことが好きだって、そう言えばいい。」
「言え、ない。」
「なんで?そんなこと思ってないから?」
「違うよ、違うけど…ごめんなさい。」
「いやだぞ。」
「うん、だからネネのこと嫌いになって?」
「できない。」
「卑怯で弱い私を、ひどい女だってなじって捨てて。」
***
ネネちゃんは大学2年生のころ、5こ上の社会人と付き合い始めた。
そいつはネネちゃんのわがままを何でも聞いてあげる優しい彼氏だったんだって。
ネネちゃんの我が儘の意味とか、強がりなところとか、本質をちゃんと見抜いてくれてて。
彼女の深い部分まで見てくれたのは防衛隊のメンバー以外では初めてだって言ってた。
「ちょっとしんちゃんに似てるところがあるかも。」
なんてあの男を思い出して笑うんだ。
幸せそうな笑顔も、嫌いだ。
だってそれは俺の為の笑顔じゃない。
私の中のネネちゃんは『攻撃こそ最大の防御』がテーマ。
我が儘なのも強がりなのも、それは全部弱い部分を隠すためのもの。
ツンデレらぶです。