忘れられないチョコの味2

「だいたい寝不足って。

『美容の為には早寝早起きが大切!』なんて豪語しているネネちゃんらしくないじゃん。

どうしたの。」

「…」

ネネちゃんは俺に左手を握られたままだったけど、顔をしかめて、反対側を向いてしまった。

「ネネちゃん?」

「言わない。」

困っていると、後ろから先生の小さな笑い声が聞こえた。

振り返ると先生はなんでもお見通しだとでも言いたそうに、面白がって俺達を見ている。

隣にいるボーちゃんはすべてを知ってるみたいだ。

「まあ、大体の想像はつくがな。」

「先生!言わないで!!」

ネネちゃんは恥ずかしそうに、声を荒げる。

「ほら、体に響くでしょ。大人しくしてて?」

時々無理に体を起こそうとして顔をしかめるネネちゃんの体の方が俺は心配だった。

だから俺はネネちゃんの頭を擦って落ち着かせた。

 

「うーん。でもやっぱり気になる。

テストはまだ先だし。そもそも徹夜派じゃないもんね。

他に夜通しすることと言ったら…ゲーム?」

「しんちゃんじゃないんだから…」

ネネちゃんは俺の言葉に呆れ顔だ。

「じゃあオール明け?」

「平日にオールなんて馬鹿なことしないわよ。しんちゃんじゃないんだから!」

うーん。

じゃあなんだろう。

考えあぐねいでいると、少し離れたところでずっとボーちゃんと一緒にこちらを見ていた先生が呆れ顔で近寄ってきた。

「野原…。お前は自分の物差しでしか物事を考えられないのか?」

一進一退の俺たちに先生がくしゃくしゃの紙袋を差し出した。

「桜田、これ。こんなんになっちゃったけど、どうする?」

「なにこれ?」

二人のやり取りが俺には理解できない。

「先生の意地悪…。」

「いやー余計な冗談言って泣かせちゃったお詫びだよ。」

といって俺の方を見た。

 

 

先生は優しくネネちゃんの体を起こし、その紙袋を渡すと、またベッドから少し離れた。

するとボーちゃんが言った。

「ネネちゃん良かったね。それと、しんちゃん驚かせちゃってごめんね。

僕もう戻るね。マサオ君が階段の後始末してくれてるみたいだからそっち見てくる。」

すると先生も、

「さ、じゃあ私も昼ご飯を食べようかな。

昼、食い終わったら病院行くからなー。」

と言ってさりげなくカーテンを閉めて行った。

 

 

 

ボーちゃんは保健室から出て行ってしまったし、先生は保健室から続く隣の部屋でテレビを見ながらご飯を食べているようだった。

実質二人きりになった保健室。

 

 

「しんちゃん、今日何の日だか知ってる?」

「えー今日?…あ!お菓子の日だ!」

昼休みを迎えるまでに、いくつかお菓子をもらった。

そうだ、丁度目の前の紙袋みたいなものも。

「そんなハロウィンみたいな考え方なの?;」

俺の答えにネネちゃんは呆れてしまったみたいだった。

だって実際お菓子がほしいと言えば、大抵の女の子は大なり小なり、なにかしらくれるんだ。

「今日はね、バレンタインって言って、女の子が好きな男の子にチョコをあげる日なの!分かった?」

「うーん。なんとなく。」

じゃあ今日、チョコを始めとするお菓子の類をくれた女の子は皆、俺のこと好きなのかな?なんて聞いてみたら、

義理と本命があって、お菓子一つ一つの真意はネネには分からないわ、って言われちゃった。

ネネちゃんって物知り!

 

 

「しんちゃんここ座って。」

そう言ってベッドの端を指さす。

俺はさっきからずっと膝立ちで、ネネちゃんの左手を握りしめていた。

その手を離して立ち上がり、ネネちゃんの体を踏まないようにちゃんと確かめてからベッドの端に座りなおした。

「ん。」

「お?」

するとさっき先生からもらったくしゃくしゃの紙袋を俺に差し出した。

「きっと中身もボロボロだと思うけど、しんちゃんにあげる。」

中を見ると、お菓子のようだった。

「おー!ありがとう!!俺、お菓子大好きだぞ!!食べていい?」

そういえば昼飯を食べる前に保健室に来たから、気付けば空腹状態だった。

「どうぞ。ネネの手作りだから絶対美味しいわよ!」

綺麗にラッピングされていたであろうリボンをはずして、折れ曲がった箱を開けると、2種類のお菓子が入っていた。

「はは。確かに美味しいぞ!」

今までもらったどのお菓子よりも美味しい、なんて言ったら喜んでくれるかな。

考えていると、ネネちゃんが口を開けた。

「ネネにも頂戴!あーん。」

そう言うから、ナッツの入った丸いチョコの方をあげた。

「こっちのパンケーキも食べる?」

そう言った瞬間ネネちゃんは物凄い形相になった。

「パンケーキなんかじゃない!ブラウニーって言ってパンケーキなんかよりもずっと難しいんだから!

それにこっちのチョコはトリュフ!!チョコって温度が命なのよ!!

もう、温度調節が大変で、思ったより苦労しちゃってこんなに怪我…」

最後まで言い終わる前に俺の視線で気付いたみたいだった。

「ネネちゃん、もしかして寝不足ってこれの為?」

「そんなわけないじゃない!ネネはお菓子作りだって完璧にこなすんだから!!

案外難しくて、寝る間も惜しんで作り上げたなんて、そんな訳…

そんな訳ないんだから…。」

泣きそうになったネネちゃんを見たら、怒る気でいたのに、怒れなくなっちゃった。

 

 

「俺ね、嬉しいよ。ネネちゃんがそんなに頑張って作ってくれたものを貰えて。

だってそれって本命ってことでしょ?」

「…。」

「ん?」

「…そうよ。」

「うん。でもね、俺さっきボーちゃんからメール来た時、ネネちゃんが死んじゃうかもって思った。

そう思ったら俺も死んじゃいそうになるくらい苦しくなった。

だからネネちゃん、自分の体のこともっと大切にして?」

「おーげさ。」

「お?本当だぞ?だって俺もネネちゃんのこと好きだもん。

ネネちゃんのこと無くしたくない。

ずーっと傍にいてほしいんだぞ。」

「…。」

「?ネネちゃん?」

「うん。ずっと傍にいる。」

 

 

そう言って初めて触れた君の唇は、

 

 

 

 

バレンタイン特集の最初を飾るのはやっぱりしんネネでしょう!

と思ったら力入れすぎて長文になってしまいました。。

保健室の先生はガサツで生徒思いの先生をイメージ。

本当はすぐにでも病院に連れて行くつもりだったけど、しんのすけとネネに時間を与えるために昼食をとった先生。

 

ボーちゃんと一緒に階段を歩いていたのは、屋上に行ってバレンタインの作戦会議をするためw

いつ渡せばいいかとか。

普通に渡したら他の女の子みたいに何も思ってもらえないんだろうなって。

そんな時に目の前でネネちゃんが倒れて、どれだけボーちゃんが驚いたことでしょう。

たまたま通りかかったマサオ君が、保健室の先生を呼んでくるように即座にボーちゃんに言って、

自分はネネちゃんの出血を拭き取るための掃除用具を用意したという、マサオ君のなんとも素晴らしい話が隠れていたんです。

けど、そんなことねねちゃんとしんちゃんは知る由もないというw

 

ブラウニーとトリュフの組み合わせは私の本命王道パターンw

今年も無難にブラウニーになりそうです。

というか私がブラウニー大好きww

大半を自分が食べるために頑張るという。

ということで、ネネちゃんが悪戦苦闘するほど難しくはないんですけど、まぁお菓子作りは苦手という設定で。

いや、トリュフは本格的に作ろうとすると、果てしなく面倒ですがね。

 

追記

そういえば今年のバレンタインは土曜日でした;

すいません。

この子たち普通に学校行ってますね;

まあそこら辺は目隠ししてください。。