「しんちゃん、ネネちゃんに他の男を薦めたこと。どうしてか、聞いてもいい?」
「…俺はねあの子がすごく大切なんだよね。それと同じくらい俺は子ども。
俺なんかと付き合わない方があの子の為なんだ。
だから頑張って他の男を薦めた。でもその言葉すらも無理やり出したんだ。
なのに、本当にあの子に好きな人ができたらって考えると、それだけで頭がおかしくなっちゃう。
きっと俺はどんなことをしてでも二人を引き離すだろうし、いっぱい邪魔しちゃうってわかってる。
そんなこと分かりながら制御できないってことも。
今の状態でも大分我慢してるんだよ?
ネネちゃんが俺の居ない所で男に何をしてるのか、されてるのか。そんなの気にし始めたらきりがない。
でも俺は大丈夫。ネネちゃんの初めてのちゅーは貰ったらかね。
それにネネちゃんに気持ちがないなら、どんなことも我慢しようって思ったんだ。俺にはそんなことまで口を出す権限なんてないし。
少し大人になったでしょ?
あ、今、そんなこと言って初キスの時だってネネちゃんが寝てる時に勝手に奪ったんだから、ネネちゃんに気持ちはないじゃん。
って思ったでしょー?俺はいーのっ!だってちっちゃい頃から想い想われの仲だもん。
いっつもさ、矛盾を感じつつもネネちゃんを傍に置いちゃう。
受け入れようとしていないのにずるいなって自分でも思うけど。
でも、おいでって言ったら喜んで俺のところに来てくれるから。
ネネちゃんが来てくれるだけで俺は安心するんだ。
ネネちゃんの隣に座ったり、喋ったり、触ったりするだけで俺は幸せなんだ。
このままちゅーしちゃおうかなー、好きだって言っちゃおうかなーって何回も考えた。
でも友達のラインを越えたら、俺は歯止めが利かなくなるから。
あ、でもね、この間自分の想いを少し話したんだ。軽く、優しく。
でもネネちゃんはちゃんと聞いてくれた。嫌がることなんてしないで、羨ましいとさえ言ってくれた。
俺、きっとちゃんとネネちゃんのこと見れてなかったんだね。
だってそんなこと言ってくれるなんて思ってなかったから。
でもまだまだ俺は大人にならないといけない。ネネちゃんを苦しませることなく愛せるように。」
「そっか。」
「うん、そう。ボーちゃんも好きな人できたの?」
「ううん、違うんだ。ちょっと聞いてみたくなって。」
「いっつも俺の話聞いてくれてありがとうね、ボーちゃん。」
「とんでもない。何の力にもなれなくてごめんね。」
「はは。ボーちゃんは良い男だぞ!」
マサオ君からネネちゃんの変化の話を聞いた。
僕もそれはまずいと思った。
いつものように手を握ろうとしたしんちゃんの手が、あの細くて綺麗な手に振り払われるところなんて見たくない。
おいで、と言ったしんちゃんの傍に、駆け寄っていくネネちゃんの姿がなくなればしんちゃんは普通じゃいられなくなる。
傷付いて、傷付いて。見ていられないだろう。
自暴自棄にならなければいい。
目の前の笑顔が消える瞬間が近付いているだなんて、信じたくなかった。
side B