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毎月恒例の5人での食事会。
待ち合わせ場所はしんのすけ達の高校の最寄駅。
今日僕の学校は中間テスト最終日で、学校は午前中で終わった。
だから私服に着替えてから、待ち合わせ場所に向かった。
いつも、学校が遠いという理由だけで遅刻してしまうので、今日くらいは5分前行動をしたかった。
制服の4人組が見えた。
しかしいつもと様子が違った。
「あれ?しんのすけとネネちゃんは喧嘩でもしたのか?」
そうだった。この二人が手を繋いでいないどころか、隣に並んで歩くことすらしていなかった。
そんな問いかけにマサオ君は何やら殺気立った目で、ボーちゃんは焦ったような目で、しんのすけは困ったように苦笑いを浮かべて僕を見た。
ネネちゃんに至っては、僕の問いかけなんて無視で「あら、そのシャツ素敵ね。センス良くなったじゃない。」なんて言う。
焼き肉屋でもネネちゃんはマサオ君の隣に、しんのすけの隣にはボーちゃんが座ることになった。
僕はネネちゃんの隣に座った(だって男3人が並ぶってむさ苦しいにも程があるから)。
注文が終わって、ドリンクバーを取りに行こうと立つと、ネネちゃんが「私カルピスよろしく。」と言い放った。
すると、しんのすけもマサオ君も続けざまにコーラだの烏龍茶だの言った。
額に青筋を浮かべると、ボーちゃんはそれを見て笑って、「僕も一緒に取りに行くよ」と言ってくれた。
「全く当然のように持ってきてくれると思ってるんだから困るよな!」
「はは。そんなこと言っていつも風間君は優しいじゃない。」
「そ、そんなこと…!…今日はどうしたんだ?あの二人。」
「うん…。ネネちゃんね、しんちゃんと距離を置くことにしたんだって。」
勿論驚いた。
好き合ってる二人が付き合えないまま終わる?
そんなことあってもいいのか?
「僕は勿論しんちゃんには頑張ってほしいんだけど、マサオ君はやっぱりネネちゃんの味方になるみたい。」
「つまり、しんのすけの気持ちもネネちゃんの気持ちも知りながら、離れていく二人の手助けを?」
「うん。」
「おっそーい!ドリンクバー取りに行くのに何分かかってるのよ!!もうサラダもライスもお肉も揃っちゃったじゃない。」
「じゃあ焼こうかネネちゃん。どれから焼く?」
「えーvじゃあカルビからにしようかなっ。」
そんな風に話すマサオ君に苛立ちは募り。
「マサオ君、とりあえずその肉を網に置いたらちょっとトイレの場所を教えてもらいたいんだけど。」
「え?それならドリンクバーの近くにあると思うから、行ってみてくれる?」
「いや、付いてきてくれ。」
有無を言わさぬ形相でマサオ君に言った。
「う、うん。わかった。」
「えー?連れション?マナーが悪いなー。食事中だよ?」
「うん、ごめんねネネちゃん。先に食べてていいから。」
そう言ってマサオ君を連れだした。
「マサオ君は何なんだ?ネネちゃんの味方って何?ネネちゃんのすべてをそのまま受け入れることか?」
「え、何いきなり。…あ。ボーちゃんから聞いたんだ。それで遅かっ…」
「僕の質問に答えてくれるかな?」
「だって、ネネちゃんは一生懸命考えて考えて出した答えなんだよ?
その結果好きな人から離れようと…。その勇気を汲み取ってあげようと思ったんだ。」
「マサオ君はどうしたいんだ?ネネちゃんの決心を最優先にしたいのか?それとも彼女の幸せを最優先にしたいのか?」
「しあわせ…?」
「そうだよ!ネネちゃんにとって何が幸せなのか、第三者のマサオ君には分かり切ってるだろう!?
なのにうじうじして、甘やかし過ぎなんだよ!!
確かにこの間は『一緒に悩んであげるだけでいい』みたいなこと言ったかもしれないけど!
違った道を選んでしまったなら、幸せに為るべく導いてあげるのも友達の役割だろう?」
「そ…そっか。」
「そうだろう!?少なくとも僕の自論はそうだよ!間違っていたら指摘してくれ!」
「…うん。風間君はやっぱり、時々どきりとすることを言うよね。」
「何だそれ、褒めてるのか?」
「うん。僕なりに。」
『軌道修正をするなら手遅れにならないうちにしなきゃと思ってたから、今日風間君に会えて良かったよ』なんてマサオ君は暢気に言っていた。
じゃあ焼き肉が終わったらボーちゃんと3人でとっとと帰るぞ、と提案したら、それはちょっといきなりすぎないかな?
なんて弱気になり始めた。
「いや、弱気じゃなくて…。なんて言うんだろう。予め話しておかないと後が怖いというか。
バイオレンス的なものが降りかかってくるのは結局僕なので…。
いや、正直ネネちゃんにも心の準備をさせてあげたいというか…。」
そこが甘やかしてるって言うんだ!
軌道修正は早めに、だろう?しんのすけが傷付いてるのを早く癒してあげたいとは思わないのか?
そう畳みかけると、しぶしぶ頷いた。
焼肉屋を出て、5人は駅に向かった。
駅前でしんのすけがネネちゃんの手首を握って、ネネちゃんはしんのすけの方を向いた。
今だ、と思って渋るマサオ君を引っ張って、ボーちゃんと3人で改札を通った。
僕自身、全然食の進まないしんのすけを見ているだけで心苦しくなった。
とりあえずどう転ぶかは二人次第だ。
お膳立てはこれで充分だろう?
side K